本研究では,青年期に発達障害の診断を受けた子どもの母親の心理的適応過程と援助ニーズについて事例を通して検討した。質的データ分析法の手順に従い,母親の心理として,7つの概念的カテゴリーを生成した。心理的適応過程を概念的カテゴリーの出現時期に基づき,3期にわけて検討したところ,Ⅱ期におけるわが子への新しい見方の獲得が転機となっていることが認められた。新しい見方とは,障害を認識した上でのわが子の特性や個性の発見であり,Ⅰ期から続くわが子理解のための探求や,Ⅱ期における支援者や仲間と行う出来事や意味づけの共有が契機となっていた。また,Ⅲ期における生き方の変化を引き起こすことの背景になっていた。相談機関やSC等心理教育的援助サービスの専門家の役割についても考察を加えた。