9月6日(土)7日(日)、玉川大学にて日本学校心理学会第16回大会が開催されます。
学校心理学(子どもと援助者と学校の援助)のさらなる発展をめざして
日本学校心理学会理事長 石隈利紀
第16回神奈川・東京大会についてみなさまに一言ご挨拶申し上げます。みなさまと、学校心理学の実践をもちより、経験と知見の交流により、子どもへ届く心理教育的援助サービスをさらに充実させていきたいと思います。
今回の大会は2つの大きな特徴があります。第一に、神奈川県の「支援教育」の立ち上げの仲間により準備された大会であることです。日本の学校心理学の主なルーツには生徒指導・教育相談、特別支援教育、学習支援などがあると思います。神奈川県では1990年代から、発達障害のある子ども、不登校やいじめで苦戦している子ども、家庭の問題で苦労している子ども、外国に関係している子どもなど、「付加的な援助ニーズのある子ども」をどう援助するかについて、神奈川県の障害児教育の関係者で議論されてきました。その一環として、スクールサイコロジスト養成研修会(当初は年に10回、3年で30回)が特別支援教育の現場の実践家を対象に行われました。「個別の教育計画の充実」や「チーム援助・地域支援の充実」を通して苦戦する子どもを援助するというコンセプトを軸に、特別支援教育のプロフェッショナルである先生方とアメリカ帰りの学校心理学者(帰国おじさん)が、思いをぶつけあい、議論を戦わせながら、学校心理学の基盤の一つを作ってきました。この神奈川の支援教育の動向は、文科省の政策(地域支援、特別支援教育コーディネーターなど)にも影響を与えたと思っております。
第二に、本大会の豊かなプログラムです。まずDO-IT Japanによる学習支援の講演(中邑賢龍先生)を初めとして、ハチの子育て(小野正人先生)、学校とスクールソーシャルワークの協働(髙間佳奈枝先生)、授業のユニバーサルデザイン(桂聖先生)という講演は、まさに「学ぶなら今でしょ」というテーマです。そしてポスター発表が65におよび、発表者が北は岩手、南は福岡で、16の都府県から実践や研究をもちよってこられているということに感銘を受けます。さらにその内容がチーム援助、インクルーシブ教育、いじめ・不登校、ソーシャルスキル・学級適応、子どもや学生への支援、そしてメンタルヘルスまで幅広いもので、多様な「子どもの援助ニーズと学校の援助力」を反映していることも、学校心理学の発展の証です。また安藤正紀先生をコーディネーターとする「様々子ども達への支援」に関するシンポジウムは、パネリストに小・中・高等学校の実践家(大里朝彦先生、村木悦子先生、中野和巳先生)、指定討論者に日本の学校心理学実践の代表的なリーダー(大野精一先生、中田正敏先生)を迎え、はっとする気づきや「目からうろこ」の学びが期待できます。さらには阿久沢栄先生と私の「対談」です。子どもの援助のために解決すべき課題に関しては忌憚のない意見(毒入り)もあり、みなさんを元気にするエールもありで、なにが飛び出すやら!?乞うご期待です。
最後に現場の実践でお忙しいなか大会のためにご尽力をいただいてきた阿久沢栄先生はじめ実行委員会のみなさまに心から感謝申し上げます。