【抄録】
刑の一部の執行猶予の判決を受け,刑事施設出所後に保護観察に付された男性覚醒剤事犯者のうち,薬物を再使用せずに保護観察を終了した2ケース(回復ケース)及び保護観察中に薬物を再使用した2ケース(再犯ケース)の計4ケースについて,保護観察事件記録を基に,その保護観察プロセスを複線径路等至性モデリング(TEM)等の手法により分析した。その結果,回復と再犯の岐路となったのは,「自分が薬物依存症であるという自覚を持てたか」「薬物使用への多様な引き金について認知できたか」「希望の仕事に就くことができたか」「仕事に充実感や順調感を持つことができたか」「疲れや体調不良に対し,休暇や治療で対処できたか」などであることが示唆された。研究結果に基づき,薬物依存症からの回復に向けて,①薬物依存症の自覚(薬物への無力感)と生活全般への自己効力感を併せ持つことができるような働きかけが重要である,②生活全般への自己効力感を育むために就労支援を充実強化する必要がある,③危機場面への素早い対応が肝要であると考察し,保護観察処遇への提言を行った。
キーワード
薬物依存症,覚醒剤事犯者,保護観察,複線径路等至性モデリング